うつわへのフラットな雑感

まさか自分が食器に関心を持つようになるとは思っていなかった。ひとり暮らしによる2年の自炊生活を経て、食事を彩るうつわが気になるようになってきた。かっこいいうつわ、お気に入りのうつわに食べ物を盛りつけると、いつもの食事が格段においしく、楽しいものになる。

普段使っているうつわからいくつか(所感を述べやすいものを)適当に取り上げ、簡単なコメントとあわせて紹介していきたい。

〈山田隆太郎〉粉引6寸

〈山田隆太郎〉粉引6寸

直近で買ったのは、五条通りに面したつくるビル4階の一画にある「monotsuki」で出会った〈山田隆太郎〉の6寸皿。

見込みに散らばった可愛らしい鉄粉が特徴的で、あたたかみのある質感の白色がそれを際立たせている。口縁のある部分は白く、またある部分は黒くなっていて、向きによってその表情を変えるのがかっこいい。この風合いって、偶発的なものなのか意図的に作られているのか分からないけれど、もし意図して作られたものだとしたらめっちゃおしゃれですよね。作家と呼ばれるゆえんだ。

6寸の中皿だがある程度の深さもあるので、野菜炒めのような主菜を盛るのに活躍する。

〈高田谷将宏〉灰釉鉢

〈高田谷将宏〉

ぼってりした口縁が目を引くこの鉢は、常滑市のやきもの散歩道に位置する「morrina」で一目惚れした〈高田谷将宏〉の小鉢。

春休みに恋人と日間賀島へ旅行したのだけれど、その2日目に寄ったのが常滑市。ぶらっと歩いて帰るつもりだったが、僕が常滑焼をテーマにした観光スポット・やきもの散歩道に魅了されてしまい、彼女に付き合ってもらう運びとなった。「morrina」のスタッフの食器に対する熱意に購買欲を煽られたこともあり、旅先であるにもかかわらず鉢を買ってしまった。まいりました。

「灰釉」と呼ばれる釉薬をかけて焼かれ、それによって若干の光沢感と色をつけることができるとのこと*1。主張しすぎない上品な光沢感が見られる。渋いオリーブ色も魅力的。見ての通り口縁が厚くなっているが(ここがチャームポイントです)、胴部分も同じくらい厚くて、重くて頑丈。かぼちゃの煮物や豚の角煮など、ゴロンとした料理が映えそう。

〈rutawa.rawajifu〉丸プレート

〈rutawa.rawajifu〉丸プレート

三条商店街の外れにある「器や彩々」で買ったこのお皿は、僕がうつわに興味を持って初めて買ったもの。この記事をきっかけに〈rutawa.rawajifu〉について調べてみたけれど、ちょうど食器入門として展開されている企画らしくて、まんまと引っかかった感じがする。

「作家もののうつわ」をまだ楽しめていない人にももっと身近に、もっと気軽に、楽しんでもらいたい 「うつわ」で人と料理や空間を「温もり」で繋いでいきたい、 そんな思いや工夫を込めたブランドです。

BRAND | atelier arinomama

リムに施された不格好な掻き落としが可愛らしく、他方でゴツゴツとした土っぽさ満載のうつわ。高台がなく平べったい作りになっているのが少し扱いにくく、出番が少なかったりする。たまに洋菓子店でケーキなんかを買ったときに使うとスイーツが引き立つ。

〈ヴォイス工房〉茶碗

〈ヴォイス工房〉茶碗

高校3年生の春休みに恋人と出かけた多治見市の安土桃山陶芸の里園内にある工房で陶芸体験をしたときに出来上がったお茶碗。電動ろくろを使ってこの茶碗と湯呑みを作った。比較するものではないけれど、作家のうつわを見た後に素人が作った食器を眺めると、そのチープさがはっきり分かりますね。チープだろうが好きな人と一緒に作った思い出の品なので割れるまで大切に使っています(彼女のはふちが欠けてしまったらしい)。

高台内には僕のファーストネームの1文字目が彫られている。下の名前は漢字一字なので、「僕のファーストネームが彫られている」と言い換えてもいいでしょう。

〈薗部産業〉めいぼく椀(楢)

〈薗部産業〉めいぼく椀(楢)

木工製品の製造・販売を手掛ける〈薗部産業〉のめいぼく椀。たしかマイナポイントで購入した。味噌汁やミネストローネといった汁物を盛り付けるためのお椀を探して見つけたもので、コロンとした愛くるしいフォルムと美しい木目に惹かれた。

僕が使っているのは、楢の木を使った中サイズ。桜や栗、欅などの他の木材よりも頑丈でゴツゴツしている印象を受けたので楢を選んだ。中サイズを選んだのは正直失敗で、僕には少し小さかった。思い切って大サイズを買っておけばよかった。

味噌汁を装うのはもちろん、たけのこの里とかハリボーみたいな一口サイズのお菓子なんかを盛ってもいい感じになる。

おわりに

食べ物を盛りつけるだけであれば紙皿やプラスチックのお椀でもじゅうぶん機能する。しかし、自分が気に入ったかっこいいうつわや作家によって作られたこだわりの作品で食べる食事は格別だし、装われた料理が一段と美味しそうに見える。

自粛生活で日々の楽しみとして自炊を継続するようになった(ひとり暮らしが始まったことも理由として挙げられそう)僕にとって、自分が作った料理が素敵なうつわに盛られることはほどよく心を豊かにさせた。特に凝った料理を作っているのではなく、淡々と自炊をしているだけなのだが、淡々と自炊をしているからこそ、良いうつわで生活がより楽しくなるのだろう。

ひとり暮らしの身なのでこれ以上食器を増やしてしまうと手に負えないが、この調子だと気になったうつわをじゃんじゃん手に取ることになりそう。近いうちに、平安神宮前の岡崎公園で開催されている「平安蚤の市」でうつわを探してみたい。

さいごに、このエントリーを制作するにあたって、安野久美子『うつわ使いがもっと楽しくなる本。』(X-Knowledge)*2を参考にしました。一般的な食器の素材や各部位の名称、釉薬や装飾方法だけでなく、うつわの使い方のいろはや作家ごとの作品の紹介など、入門向けのコンテンツが満載で、とても良かったです。

*1:morrina のインスタグラムアカウントへ本商品について問い合わせたところ丁寧に回答してくださった

*2:X-Knowledge | 選ぶ。そろえる。合わせる。うつわ使いがもっと楽しくなる本。