松本で牛乳パンを食べるまで

「牛乳パンを食べたい!」と恋人から告げられ、近いうちに長野県を観光したいですねと意思疎通したのが2020年4月のこと。それから2年ほど経過して、遠征をするリスクを考慮することよりも、じっくりと膨らませていた野望が叶わないことがいかに致命的であるかに着眼がシフトしていったので、僕の帰省のタイミングに合わせて長野県を観光することになった。

高校卒業前に姫路市へ旅行した以降でかめの遠出をしていなかったので、通話して宿泊先を検討しつつ、阿智村の星空ツアーは魅力的だけどパッケージが今の気分ではないねだとか、長野県出身の友人に勧めてもらった善光寺まで電車に乗るのはくたくたになりそうだからスキップしましょうだとか、いろいろ取捨選択した結果、松本市に2泊することに決まった。市の花はれんげつつじの松本市です*1

こばやしで天ざるを食べる

ぐらぐら揺れる特急しなのに乗りながら、田島列島子供はわかってあげない 上』を無理して読んで、軽く酔いつつ、ほがらかな足取りで松本駅に着いたのが昼前。長野といえばそばでしょうとミーハー丸出しで、そば屋へ駆け込むもどこも売り切れか店休日でおろおろしていたところ、ようやく空いている店舗を見つけた。なわて通り商店街付近にあるこばやし。観光客がわらわら集まっていたので、われわれも観光客としてふさわしい待ち方をしていた。

長期インターンシップをしている彼女の話を聞いて、「そんなの辞めた方がいいよ」と無責任に言葉を投げながら、一方で僕はインターンはもちろん就活すらまともにしてないので、そろそろちゃんとしないとなと考えながらそばをずるずるすすっていた。そば湯とかじゃなくて、食前に提供されるお茶がおいしかった。あとさつまいもの天ぷら。彼女にも一口あげて、ねっとりと甘いさつまいもの天ぷらの素晴らしさを共有し、バンザイした。

藍蔵で餃子を食べる

かっこよすぎて入るのも憚られるイオンモール松本を散策するなどして過ごしたあとは、浅間温泉街にあるホテルにチェックインした。夕飯は各自適当に食いに行ってくれシステムを採用していたので、徒歩数分にあった中華料理店へ。輝く「中華」のサインを目にして、これから最高の中華体験をすることになると確信しました。

皮がもちもちの餃子に出会った。野菜と肉がナイスなバランスの餡が分厚い皮に包まれていて、餃子というよりも小籠包に近いような食べものだった。うまい! 食べ方に失敗すると肉汁がピョッと出てきてしまうので、ひと口でほおばった。

onsen hotel OMOTO のご飯のお弁当

2日目の朝食はホテルから提供されたかわいらしいお弁当。おにぎりや卵焼き、焼き鮭などが詰められていた。写真映えしますね。真上から撮影したほうがフォトジェニックさが伝わったのかもしれない。恋人が、Instagramで気取ったアカウントが、写真に具材を紹介する手書きの文字(白)を書き込んで投稿していそうと言っていて、わかる~と納得していた。実際にどうかは知らない。

松本城(昼)

出発前は雨の予報だったのに、曇りをキープしていてありがたいっすねとぶつぶつ言いながら松本城の中に入った。小学生の頃にも一度訪れていて「松本城は階段が急」以外の記憶がなかったんだけど、あながち間違いではなかった。松本城は急な階段が売りで、その印象が強すぎてそれ以外のことを忘れてしまう。「松本城は階段が急」というコンセプトがより濃くなった。

城と一緒に写真を撮影してもらおうと、観光客に声をかけようと数十分くらい辺り一帯をウロウロしていた。揃って変な挙動をしていたと思う。

源智のそばで山家天そばを食べる

1日目に売り切れだったそば屋でそばを食べることに成功。このざるが別のお店で販売しているのを見かけたんだけど、1万円していました。10Kざるに乗せられた1.5Kそばを堪能したということになる。

後ろの組で売り切れだったらしく、かなり危なかった。われわれが大盛りを注文しなかったおかげで、後ろの家族の子どもたちが大盛りを楽しむことができていて、バタフライ・エフェクトかも。違ってたら違うって言ってください。

松本サマーフェスト2022

なんとあの松本サマーフェストが3年ぶりに復活! 松本パルコ前の花時計公園で「松本サマーフェスト2022」と呼ばれるビアガーデンみたいなイベントが開催していたので、そこで夕飯を済ますことにした。ふたりとも飲酒はしないでヘルシーに過ごすという逆張りの仕方をしているので、アルコールはそこそこに、ピザやらケバブやらヤンニョムチキンやらソーセージやらを食べてかなり満喫した。マルゲリータピザがおいしすぎたので2枚食べた。後日彼女から「お前はピザで構成されている」とLINEが来たけどさすがにそこまでじゃない。大きな音楽が流れる中、みんな思い思いにビールなどを楽しんでいてすごくいい雰囲気だった。

向かいにいたカップルの女性がめちゃくちゃ可愛くてふたりで盛り上がった。オレンジっぽい髪色とパープルのトップスがとても似合っていて、いいすね~と言いながら眺めていた。

花時計公園の注意書きの看板のイラストがとても魅力的だったので見てくれ。

こいつ好き。

松本城(夜)

松本城は夜間にライトアップをしているとのことだったので、食後歩いて見に行った。てっきり赤や青や黄色のライトでギラギラ照らされているのかと思っていたのだけれど、真っ白の光に照らされているだけだったのでクールだった。周囲も明るくなかったので、まるで松本城が浮かんでいるようで見ごたえがある。堀で逆さ富士みたいな現象も起きていた。

ホテルへ帰る道のりで、1日目にナルゲンの水筒を持った人とすれ違った。観光客だろうか、地元の方だろうか。同じ人とすれ違うことのおもしろさが観光旅行にはある。ちなみに、2日目に宿泊したのは館内はすべて畳敷きのビジネスホテルっぽいところで、素足であちこち移動するのが楽しかった。

こいつも好き。

小昼堂でおやきを食べる

3日目最初向かったのは、城下町のおやき屋さん。おやき屋さんというよりおやきカフェを呼ぶのがいいかもしれません。カフェっぽい出で立ちをしているので。2日目に食べに行こうとしたら店休日だったので、3日目に訪れたという背景がある。僕が食べたのは、野沢菜とねぎ豚とつぶあんくるみ。ずっしりとしていて食べ応えがあった。

小松パン店で牛乳パンを買う

ようやくこの旅の目的の牛乳パンに辿り着きました。ここまではすべて前振りといってもいいでしょう。この小松パン店の牛乳パンは前もって予約しておかないと購入できないようで、松本市に到着したタイミングで電話をして3個注文した。そのキープしたのを帰る直前に受け取りに行ったという感じ。同日にパントリーマルナカ、前日に駅前のムラタの牛乳パンを食べたのだけれど、この小松パン店のが最もボリューミーだった。小動物くらいの重さがある。シャリシャリとした甘すぎないクリームでたしかにこんなクリームならこのボリュームでも食べられますねと思った。思っただけで、ひとりでひとつ食べきるのはかなりしんどい。

手に入れた牛乳パンを信毎メディアガーデン3階のテラスでもごもご食べた。数年ごしに牛乳パンを食べることのできた恋人はあまりのクリームの多さにあまりピンときていなかったようだった(そばとかすすっているほうが笑顔だった)けれど、とはいえ念願の牛乳パンを食べ比べできたのが楽しそうだったのでこちらも嬉しかった。これで長野県松本市で牛乳パンを食べるまでの記録はおしまい。

おわりに

他にも訪れた場所や食べたものはあったのだけれど、本当に楽しかった思い出は記憶にとどめておこうという表向きの理由と、ほとんどの写真に恋人が映ってしまっており取り上げにくく、多すぎて(書くのが)しんどいという裏向き(?)の理由のため、一部を切り取って紹介するというスタンスをとることにした。どちらにせよ食べものの話ばかりになってしまう。

長野市松本市に滞在するつもりだった計画を、松本市のみの観光にしたのが案外よかった。というのも、ぶらりと寄ったお店が定休日でも「じゃあ明日、あるいは明後日改めて行ってみよう」が通用する(した)のがいい体験だった。全体を通して無理せず時間を過ごすことができた感じがある。あと、ひとつの街を何度も歩くことで愛着がわくというのもある。なんにせよ「2泊3日松本旅行」でかなりナイスだった。

先にも触れたけれど、同じ観光客と何度もすれ違う体験をするのも妙な連帯意識が芽生えて楽しかった。行きの電車で見かけた家族と偶然同じバスに乗ったり、グリーンのだぶだぶしたパンツを穿いた女性と黒の短パンの男性を別の場所で何度か見かけたり、みんなで観光を楽しんでいますね、いいですねというこそばゆい気持ちを知れた。


恋人が食べたがっていた牛乳パンを食べることができてよかった! また(いつか食べたくなったら)食べたい。松本サマーフェスト2022で食べた Pizzeria Aletta のマルゲリータは明日にでも、今すぐにでもいいから食べたい。今後到来しうる旅行チャンスも、巧みにキャッチしていけたらいいと思う。次回は福井県の水島へ行きたいすねと話をしたりした。